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米医師が解説する、「汗」をかいても風邪を治すことはできない理由

米医師が解説する、「汗」をかいても風邪を治すことはできない理由

熱が出ると体が熱く、ムカムカと嫌な気分で、できるだけ早く治ってほしいと思うだろう。それは当然のことだ。 そこで、熱を早く下げるには「汗をかいて追い出す」のがベストだと人が言うのを聞いたことがあるのではないだろうか。つまり、重ね着をしたりブランケットをかぶったりしてうずくまるとか、サウナに入ってさらに汗をかくというものだ。そうすれば、ズンバのクラスやガーデニングに戻ることも、いつでもこの”悪魔”を退治することができると。 汗をかいて熱や感染症を追い出すというのは魅力的な話だが、期待通りになるかといえば、それは神話だ。医師たちは、そんなことをするよりも、じっと待ったほうがいいとアドバイスする。それには、いくつか理由があるようだ。 ところで、発熱とは? 「熱は免疫システムが機能しているというサインです。仕事をしているのです」と言うのは、フロリダ州ジャクソンヴィルのメイヨー・クリニック家庭医療のティナ・アードン医師。体は体温を上げてウイルスや細菌を「燃やそう」とする。高温だと生き延びるのが難しいからだ。 そして、感染を起こしているものが免疫システムによって火がつけられると、熱によって生じた汗を通し、体温の一部はひとりでに下がる。毛穴からでる液体である汗が空気に触れて蒸発し、体温を下げる助けをするのだ。「体にはうまく体温を調節する機能があり、その一部が汗をかくというプロセスなのです」と彼女。 ならば、もっと汗をかいたほうがいいのでは? とも思うが、答えはノーだ。 発熱や感染を「汗をかいて追い出す」ことができない理由 「ウイルスや細菌感染は、汗を通して何となく逃げるという誤った考え方があります」とアードン医師。「それは間違いです。インフルエンザにせよ新型コロナにせよ、感染症が体液を通して体から出ていくことはありません。余計に汗をかいても発熱は改善しないのです」と彼女。 この神話は厄介だ。というのも、汗で“毒素”を外に出すことができる(また、出すべき)という考え方があるからだ。ウエルネスのサークルなどではよく繰り返されている。それも間違っていると、Science-Based Medicineの創業者&エグゼクティブエディターで、イェール大学医学部臨床神経学准教授のスティーヴン・ノヴェッラ医師は言う。 「汗は、体から何かを除外する時に用いるメカニズムのひとつ」だが、主要なものではないと彼は言う。不要な化学物質や薬物をろ過する役目を主に担っているのは腎臓や肝臓だ。それに、ウイルスや微生物は毒素ではない。だから、「汗をかくのは、体が感染を撃退する手段ではないのです」と彼。 「汗をかいて追い出す」ことで症状を悪化させる可能性も 風邪やインフルエンザ、食あたりになると、弱って無気力になり、水和した状態を保つのが難しくなるため、水分を出す量を増やすと症状が悪化するだけだ。「それどころか、もっと汗をかかせると、害を及ぼす可能性があります」とアードン医師。 「脱水症状は大きなリスクですが、間違いなく熱中症のリスクにさらす可能性があります」 また、熱が出た時はあまり食べたり水分を摂ったりしていないかもしれないし、下痢で水分を失っているかもしれないとノヴェッラ医師は指摘。 脱水症状を起こしているだけでなく無理に汗をかくと、体の水分バランスと神経機能を維持するのに不可欠な塩分が不足する可能性がある。 バランスが悪くなると、血圧や筋肉の機能に影響を及ぼすのだ。「ほとんど最悪の気分になるわけです」と彼。 論理的ではない 熱を取り除くというのは冷やすということ。ブランケットにくるまるのは正反対のことをやっている。「体温を下げようと考えて、故意に上げているのでは筋が通りません」とノヴェッラ医師。 だから、汗をかく目的は、それが蒸発する時に体を冷やすことで、それは熱で体が自然にリラックスした後に起こる。ウイルスを攻撃するために体温が急上昇し、その後、汗をかいて平熱に戻す、という考え方だ。 そのプロセスを、人工的に体温を上げてもっと汗をかくことによって阻害するのは、「冷えて、心地よくなり、全体的に具合が良くなる」というプロセスを遅らせるだけだ。 しかも、それを何の理由もなくやっていることになる。「汗が熱やウイルスを撃退する」ことはないからだ(上記参照)。もちろん、もっと汗をかこうとして脱水症状を起こすと回復をかなり遅らせてしまう。 では、なぜ多くの人は「汗で熱を追い出そう」とするのか? 人は、たとえ効果がなくても「汗をかいて熱を追い出そう」とする。それはいいアイデアだと聞いているし、「間違いだ」と信じる情報がないからだ。それなりの人数がこうしたアドバイスを聞けば、「“誰でも知っていること”になります」とノヴェッラ医師。 そして、それが常識のようになると、効果があると期待し、おそらくプラシーボ効果で「いくらか補強されるのです」と彼は言う。 他に大きな理由としては、多くの人は具合が良くなるよう何かしたいものだということがある。「問題が生じると、特に健康問題に関しては、人は能動的になりたがります」とノヴェッラ医師。「何かするより、しないほうが難しいのです。何もしないのがベストな時でもそうです」。 医師ですら、この癖に陥ることがあると彼は言う。待つのがベストだと示すエビデンスがあっても、「治るのを待っているだけでは満足感が得られない」のだ。 では、発熱にはどう対処すべき? 腑に落ちないかもしれないけれど、エビデンスからはほとんどの場合、熱はまったく治療すべきではないことがかなりはっきりしている。 「熱は体が感染症を撃退する手段です。一般的に、風邪やインフルエンザ、ウイルスによる感染症であれば、積極的な治療をすべきではありません」とノヴェッラ医師。 その代わり、自分が心地よく感じ、脱水症状にならないためのことをするといいが、感染を燃やす仕事は熱に任せるよう、アードン医師は言う。 「特に子どのに関しては、熱恐怖症に苦労します」と彼女。それが急いで薬で熱を下げようとすることにつながるのかもしれないと言う。大人にも子どもにも、いつ、どのように熱に対処すべきかというガイドラインがあるが、アードン医師は、特定の体温で区切って、それを超えたら積極的に熱を下げるべきだという考え方には反対だ。 「患者によるのです。私は102F(約39度)あっても元気で話ができる人より、101F(約38度)で食べたり飲んだりできず、いつもの状態ではない患者のほうが心配ですね」と彼女。 そこで、こうすればいい。もし、熱で体が熱く、眠ることや食べること、飲むことができず、ウイルスから回復するのを助けるのに十分な水分や栄養、睡眠がとれない場合は、治療することを考える。 その場合、「タイレノールやイブプロフェンが非常に役立ちますが、熱を完全に解消することがゴールではないかもしれません。患者の気分が良くなり、睡眠をとり、水を飲めるようになることのほうが大事です」と彼女は言う。 発熱で医師に電話すべき場合は? 生後3ヵ月以内の赤ちゃんが100.4F(38度)以上あったら、小児科医に連絡をとろう。大人の場合は、熱が数日間下がらず原因不明の場合は、医師に電話しよう。それ以外は、さまざまな要因によるとアードン医師は言う。 だから、疑問がある場合は、とにかく医師に連絡を。子どもは大人より高熱が出る傾向があり、怖くなるが、免疫システムが大人より頑強だからだと、アードン医師は言う。 「私は熱で電話をもらってもまったく苦になりません。水を飲んでいますか? おかしな行動をしていませんか? 話をしていますか? など、適切な質問をするチャンスになりますからね」 とはいえ、ウイルスや細菌が原因と思われる通常の熱が出た場合は、ゆっくり休めば、数日後には回復するはずだと彼女はアドバイスしている。 ※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。 Translation: Mitsuko Kanno From Prevention This content is created and maintained by a third party, and imported onto this page to help users provide their email addresses. You may be able to find more information about this and similar content at piano.io Read Full Article